「ラブライブ!」と「宇崎ちゃん」ポスターに共通する問題

ラブライブ!」のコラボポスターが批判されています。

 コラボ広く公知させることが目的のポスターでスカートが透けているイラストを使うのは批判が集まって当然でしょう。作品のことを詳しく知らなくとも、女学生の様なキャラクターが透けたスカートを着ているというシチュエーションの異常性はひと目で感じ取れます。これは炎上まったなしです。

さて、一方で元々「ラブライブ!」のファンは、そもそもなぜ多数の批判を集めているのか困惑します。ポスターの絵をどう見たって普通のスカートであり、そもそもキャラクターが透けたスカートを着るような作品じゃないのですから。

 

まず批判派にとっては、あのスカートはどう見ても不自然です。実際にスカートを着用しても、イラストのようなシワはつきません。透けてないとしたら、股間のラインを強調するために無理に布を食い込ませた性的なポーズのように見えます。スケスケスカートではなかったとしても、女学生のキャラを過度に性的に描くのはやはり問題があるでしょう。

ラブライブ高海千歌ちゃんのスカート問題 実際にプリーツスカートを履いて確かめた結果・・ - Togetter

一方で擁護派にとっては、何が問題なのかわからないくらい普通のイラストです。たしかに股間のラインにシワが付いて影が落ちていますが、同様の手法は「ラブライブ!」を見ていれば散見されます。今回のポスターに限ったことでなく、様々なシチュエーションのイラストで見慣れていますし、これまでに性的なシチュエーションもない作品なので今回もそうでないことはわかります。

 これは技術的な視点でも裏付けされていて、プロの漫画家やイラストレーターにとっても、あえて性的に描いたものではないとわかります。

 とはいっても、元々「ラブライブ!」に詳しくない人からするとそんな事情はわからないし、技術的な話なんてそれ以上に理解が難しく、コラボイラストが透けて見える・性的なポーズに見えるのは致し方ないと言えるでしょう。

 

 

少し前にも似た問題がありました。「宇崎ちゃんは遊びたい!」の献血ポスターが過度に性的に見えるというもので、批判派にとっては「媚びた表情(アヘ顔)」「胸を強調したポーズ」が公共の場に掲示するポスターとして相応しくないとのことでしたが、元々作品を知る人にとっては、媚びた表情をするようなキャラクターではないし、過度に胸を強調したイラストではなく元からそういった画風なのだということはわかってますから、何の問題も感じません。

「宇崎ちゃんは遊びたい!」は第二弾コラボの特典が漫画になったことで批判の波は収まりました。これは擁護派が知っていた作品の文脈が批判派に共有されたためでしょう。

 

 

ラブライブ!」と「宇崎ちゃん」の問題、両方に共通しているのは元々の作品やイラストの技術的な知識があれば性的に見えないものが、そういった文脈を知らない人にとっては性的に受け取れてしまうということです。こういった問題は今回たまたま「ラブライブ!」「宇崎ちゃん」で起こりましたが、どんな作品でも起こりうる問題だと思います。本来作り手にとって意図しないものが受け手によっては感じられてしまうといった問題は創作の歴史を紐解けばそう珍しいものではないからです。今回のような話題のたびに、「この作品が問題になったが、じゃあこっちの作品の方は問題ないのか?」といった議論提起が巻き起こるのはそういうことであり、「受け手の感じ方」の問題としてしまうと、それこそ受け取り方なんて千差万別であり、マンガ・アニメに限らずあらゆる作品・表現が批判の対象たりえます。極論に思えるかもしれませんが、この議論の行き着く先は、批判派が完全に沈黙するか、あらゆる表現が規制されるかのどちらかです。実際本件に関する意見をSNSなどで見て回っても「こんなポスターは相応しくない、規制しろ」「規制派の言い分は間違ってる。規制派は頭がおかしい」みたいな強い論調が両者共に目立っていて譲歩点をさがす方向に全く議論が向いてないんですよ。

 

 

重要なのは、知ることです。
強弁な人こそ、知らないものに対しては自分の知ってる常識に照らして強くものを言いがちになり、強い言葉で言われたら言われた方も強い言葉を使いがちになるもので。論点がどんどん置き去りになって議論が白熱して、そうなると発端になってるポスターの企画の責任者なんて蚊帳の外で結局うやむやな状態で判断を下すしかないわけですよ。批判が通って規制されたり、通らず変わらなかったりとするわけですが、どちらになったとしてもなぜそうなったのか明確じゃなく、明確なことでないと事例として全く共有されないので、同じ様な問題が何回も繰り返される。
批判側にも擁護側にもそれぞれの文脈があり、それらすべての文脈を把握するなんてことは到底無理でしょうが、自分と違う文脈を持っていることは知っておくことで多少冷静に議論ができるはずです。作品の作り手やファンは、文脈を知らない人にとっては性的だったり不快に感じられることもありうると理解し、批判側は自分が感じたものと違う感じ方がある可能性を知ること。おかしいと感じた表現はしっかり表明すること、対しておかしくないと感じればこれはおかしくないよと言うこと。幸い現状でもそれぞれの文脈を共有しようという向きはあるので、それらの向きに対して強く言わないこと。互いの意見を傾聴すること。

「宇崎ちゃん」と「ラブライブ!」どちらも問題の根幹は同じであり、「宇崎ちゃん」であれだけヒートアップした問題がすっと収まったんですから、互いを知って冷静に意見すればそれぞれにとって良い方に推移させられると思います。